パソコン版を見る

尾崎塾
富田教室

[2011年4月8日]

「しきい値」という言葉を知っているかどうか

放射線量がある値以上にならないと有意に障害の発生率が高くならないという。

なので,ある値より少ない被ばく量なら問題ないとか。

こういった「ある値」のことを業界用語で「しきい値」という。

生物学の中で出てくる「閾値」と書いて「いきち」と読む用語とはちがって,もっと広く何にでも使える言葉である。

たとえば,津波が発生するマグニチュードは6.5以上である。
それ以下で津波が発生したことはない。(微弱なものは知らんが)
こういった場合,津波発生のしきい値はM6.5だという話になる。

理工系の大学ではこの「しきい値」という言葉を普通に使っているのだが,他の業界ではあまり使わないようだ。

以前に京都大学が物理の入試問題でこの言葉を使って出題したことがある。

それにかみついた高校の教師がいた。
その趣旨はこうだ。
「これはしきい値ではなく閾値の誤りではないか。しかも,閾値は生物の教科書には出てくるが,物理の教科書には出てこない。高校生に解かせる問題文としては不適切だ。」
この指摘を受けて,京大の先生は苦笑いをするしかなかった。
そもそも,受験生がその趣旨を文脈から理解できなかったはずもない。そもそも,生物の閾値とはちがったノリで使っている。そもそも閾値の誤りではなく「しきい値」なのだ。
おそらくその先生は教育大系だろう。
どうやら教育大ではそんな言葉は使われていないようだ。

ところで,どんな理工系大学でも「しきい値」が通じるかというとそうでもない。実はおそらく国公立大学では通じるが,私学出身の人には通じないことがある。ひょっとすると,大学のレベルによるのかもしれない。日常的に「しきい値」の概念が存在するレベルと,そんなことを思いつきもしないレベルの差。これは相当に差がある。

「しきい値」という言葉を知っているか知らないか。
実は,ここが学問レベルの「しきい値」なのかもしれない。


放射線をある値以上に浴びるか否か。
こういう危険性の判断はまさにしきい値の概念。
日本のマスコミはこの概念をわからずに報道しているので,逆に国民を混乱させているように見える。
この概念は一般国民には難しいし,政治家にも難しい。
ただ,総理がたまたま東工大出身なので,おそらくしきい値の概念を理解して指揮をとれているはず。
不幸中の幸いかもしれない。


にほんブログ村 受験ブログ 受験塾・進学塾へ
にほんブログ村