[2012年1月15日]
地学の問題は例年並みの難易度だと思われる。
ひととおり勉強したら80点は楽に取れる。
「どうだっけ?」と受験生が迷う問題が数問入っているので満点は難しいが。
1つクレームをつけたい選択肢があった。
第1問の問6
初期微動継続時間が2秒でP波S波の速度が5km/sと3km/sとして震源距離を求める問題。
解法:P波S波の到達時間の差が2秒なので,震源距離をdとして,
d/3-d/5=2 より d=15km となる。
選択肢は?12 ?13 ?14 ?15 ?16 なので正解は?
ちょっと待ったと言いたい。
電卓を用意して確認してみてほしい。
仮にP波速度が5km/sとしてあるが,実際は5.2km/sだったかもしれない。
すると計算結果は約14kmとなり,?も正しい可能性がある。
同様に3km/sだって実は2.7km/sを四捨五入してあるに過ぎないかもしれない。
そうやっていくと?から?まですべて可能性としてはある。
しかも十分にある。
?である可能性よりも?以外の値になる可能性が高いくらいだ。
最も適当なものを選べと言われても・・・
通常,地学ではこのようなシュミレーションでは数値に幅を持たせて議論する。
有効数字というものだが,地学の教育現場ではあまり細かく指導はしない。
なぜ指導しないかというと,物理や化学よりも観測誤差が大きく,厳密に扱いにくいからだ。
物理の問題でなら5km/sと表記されていれば有効数字1ケタと考えずにちょうど5であると解釈する。そういう指導もなかなか徹底されていないと思うが。
で,地学でもそういう仮定で計算してほとんど問題にはならない。
しかし,今回の出題の選択肢は全くナンセンスとしか言いようがない。
実際には地質が完璧に一様である可能性はほとんどないのだから,本来はその誤差の検討までするのが大切なのだ。
たとえば15km±5kmである可能性が高いとかいう議論になる。
試験であるから計算させて15kmを選ぶのはかまわないが,それなら選択肢は初期値に誤差があったとしてもそういう値になりえないものにしておくべきなのだ。
たとえば?2 ?4 ?8 ?15 ?32 くらいにしておけばよかったのだ。?や?の可能性はわずかに残るが,可能性としてはかなり低くなるからOKだ。
本問のように初期値がわずかに変われば結果が大きく変わることが地学では普通にある。
カオス理論での初期値鋭敏性の問題である。
気象学で10日先の天気が予測できないのはこのためである。
実はこういった考え方は地学では本質的なものなのである。
だからこそ今回の出題のような選択肢は地学には全くそぐわないのである。
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