[2012年7月16日]
幼児教育から大学受験までを扱う中堅の進学塾「馬渕教室」を展開するウィルウェイと、「稲田塾」を展開するイナダは12日、大阪市内で記者会見し、経営統合することを明らかにした。(産経)
一般に会社が経営統合して大きくなると,スケールメリットというのがはたらく。
同じような商品を一括して仕入れたり,設備の無駄がなくなったりするので,製造業などではメリットが大きい。
そのメリットは,安価にモノが造られることによって消費者に還元されるので,消費者側にもメリットがある。
さて,塾でそのようなメリットはあるのだろうか。
今回の例では,稲田塾が吸収されるようだ。
馬淵から見ると,奈良に新規に事業展開するよりも既に教室のある稲田塾を吸収した方が手間がかからない。
しかも,稲田塾と生徒の取り合いをする必要もなくなるので,そのメリットが大きい。
稲田塾はおそらくこのままでは経営が危うかったのだろう。
どこかに吸収してもらえば,社員さんを路頭に迷わせずにすむ。
教材の開発や講師の養成に関してはスケールメリットがはたらくので,なんとか経営的にOKになるのだ。
問題は,消費者にメリットがあるかどうかだが,これはほとんど期待できない。
授業料は安くしないはず。
そもそも社員の雇用確保が目的なのだから,経営統合してういたお金はすべて給料の支払いと経営の安定に使われる。
それなら,教育内容が良くなればいいが,それも期待できない。
今まで,奈良県で培った教授ノウハウと,大阪でやっていたノウハウは異なるのだが,奈良の稲田塾改め馬淵教室でも大阪の馬淵教材を使うようになる。
奈良の生徒にとっては,やはり稲田塾の教材の方がいいに決まっているのに。
結局,組織が大きくなるとその組織を維持することが目的になって,塾なのに生徒の方を向いて仕事をできなくなってしまう。
大きな塾で,なんとなく「商売」っぽい雰囲気を感じてしまうのは当然なのである。
成績上位者は次の広告に載せる上位校合格者数のための生徒。
宣伝費と考えて授業料を安くしてでも来てもらう。
そしてより熱心に教える。
その子の将来のためではなく,塾の存続あるいは講師の給料のため。
成績下位の生徒は,それは大切なお客様。
塾業界にはトンデモな隠語がある。
成績が低くても,そういう生徒の数が多ければ経営は潤う。
だから,その生徒(あるいは保護者達)を「運び屋」というらしい。
授業料を運んできてくれる人という意味だそうだ。
そういう話を聞くと,大きな塾って成績最上位の生徒さんにしかメリットはないと思う。
その点,小さな個人塾の方がその生徒一人一人の将来を考えて接してもらえるので断然いいと思う。
一方で,小さい個人塾の最大の弱点は,その経営者が倒れたりするとどうしようもないという点だ。
私はどういうわけか,今のところ健康に不安はないが,いつもその心配はしている。
たとえば万一そうなった場合,前金でいただいている授業料は当然お返しするとして,せめて転塾するのに必要な入塾金もあわせてお返しせねばいけないと思っている。
(この部分コピーしてとっておいてもらっていいですよ)
そういえば,最近近所の個人塾の先生が急に体調を悪くされて塾をたたんでしまった。
そこはウチの塾と同様に,生徒一人一人に課題を与えて丁寧にされていたので,いい塾が一つ消えてしまったことになる。
私より少し高齢の方なので,体調面に不安はいつもあったと思う。
私はあと15年くらいは倒れない予定だが,それまでに後継者を育てておきたい。
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