[2012年7月29日]
大学受験で,受験生が第一志望の合格から遠ざかる方向の指導については昨日書いた。
今日も第一志望から遠ざかる罠について。
ここでいう第一志望というのは,その本人が目一杯努力したらつかめるであろう最高レベルの大学としよう。
AO入試
何それ?
というのが第一印象だろう。
アドミッションオフィスの略だと言われてもピンとこない。
まず,通常の大学入試のしくみを知らないとわからないと思う。
普通の試験は大学の学部単位で動く。
あるいは学科ごとに細かい配点など異なっていたりするが,基本的には大学の教授会が中心となって,学部学科ごとに入試の方式を決定する。
一方AO入試は入試の事務局(アドミッションオフィス)が入学者を決める入試なのだ。
事務員だから当然難しい入試問題は作れない。
何をもって合格させるかというと,志望の熱意とか特技とか人柄?とかで合格させるのである。
米国などではよく行われていたが日本でも導入する大学が増えてきたのだ。
さて,これを聞いたボンクラ受験生は,
「おっ,勉強しなくても入れるやん!」
と非常にノリ気になる。
たとえば,関関同立を志望していたボンクラ受験生が国公立大学のAO入試の要項を片手に,
「ボク,この大学受けてみたいんですけど・・・」
と相談に来るのだ。
たとえば大阪府立大学の工学部でAO入試がある。
出願資格は本学での勉学を強く希望する者で学業成績がきわめて優秀であることと書いてあるが,評定の数値などで測るわけではないのでほとんど誰でも受験資格があるともいえる。
昨年は20名受験して4名が合格。
これに「ダメ元」で受験しようとするのが「アホ」なのである。
AO入試が,「アホかおまえは入試」の略だと揶揄される所以である。
そもそも昨日まで関関同立と言っていて,「本学での勉学を強く希望し」とはならないわけだ。
あたりまえの話,本当なら阪大だって合格する実力がありながら,あえて大阪府立大学を選ぶくらいでないとこの条件を満たせない。
巨人にだって阪神にだってドラフト1位でかかりそうな実力を持っていながらあえてオリックスを希望してくれるみたいな。(例が変かな?)
つまり,大阪府立大学に入れたらメッチャラッキーと考える人は全員アウト。
合格した4人はおそらく阪大でも上位に活躍できる頭脳の持ち主である。
ほとんどの国公立大のAO入試は,それと同等か下位の大学レベルの人が「ダメ元」で合格するレベルではない。
阪大にもAO入試があって,資格は国際数学オリンピックに出場した者というように,日本のトップの頭脳でないと話にならない。
見方を変えると,国公立大でもAO入試で入学する人は自分の本来合格できる最高レベルの大学に行かないことにもなる。
京大に行けるのに阪大にしてしまっているのだから。
そういう意味で,世の中のためになっているのか疑問のある入試制度である。
さて,国公立大のAO入試に出願するのは「アホ」と確定した。
では,私立大学のAO入試はどうか。
現状,早稲田と慶応がやっているが,これは相当に能力が高くないと合格しないので,国公立と同等の扱いでよい。
阪大や京大に合格できるレベルなら早慶のAOにも合格するだろう。
実際,教え子で早稲田のAOで合格した生徒がいるが,阪大でも合格する実力を持っていた。それに加えて特技があったので,それを利用して早稲田に入ったのだ。
関関同立レベルだと,たとえば全国大会出場レベルのクラブのキャプテンをやっていたくらいなら合格できるが,クラブを一生懸命やりましたレベルでは話にならない。スポーツの実績で非常にすぐれているのなら,スポーツ推薦で合格できる。それならAOで合格する必要はない。
高度な資格なり特技を有する者は合格できるが,評価がわからないので確実性がないのが怖いところだ。
確実に合格するにはきっちりと学力をつけるのが一番なのである。
もしも関関同立をめざしていて,AO入試に目が向いてしまったら最悪の結果になる可能性が高い。
普通にしっかりやれば8割くらいの確率で合格できるであろう生徒が何かの特技を持っていたとしよう。
AO入試での判断基準がわからないが「ダメ元」で受験したとする。
その受験の際に,当然ながらたくさんの書類を書かないといけない。志望理由とかその特技についてとか。そういうのに膨大な時間がとられる。面接もある。「親切な」先生がご丁寧に面接の練習をしてくれたりする。ほとんど1か月以上はその合格基準もわからず,対策の仕方もわからない入試に向けて費やされるのである。試験を受けたら合格発表までの間は勉強する気がまったく起こらない。だって,合格しているかもしれないから。
それで,ある日,不合格の通知が来る。
最初は「ダメ元」のつもりだが,たくさん準備をして受けて,基準がわからないだけに,日に日に合格しているかもしれないとの期待が高まっていたわけで,それが谷底に突き落とされる。
ショックで1か月くらい勉強が手につかない。
本来の一般入試に向けてきっちりやっていれば,8割くらいの確率で合格したであろう生徒は,AO入試を受けたがために,確率が1割以下になってしまうという,昨日書いたのと同じようなハメになる。
いや,それでも合格できる可能性があると言われるかもしれない。
そうであってもAO入試はおすすめしない。
だって,受験勉強をせず,学力試験を受けない人は学力が低いまま大学に入ることになるから。
大学って,その特技をしに行くところではないのだから。
賢い頭脳をつくって,その賢い頭脳に磨きをかけて世の中の役に立つことを身に着けるために行くのである。
そこをおろそかにして行く大学なんか意味がない。
さて,関関同立よりレベルの低い大学のAO入試はさらに面白いことになっている。
軒並み,倍率が1.0倍。
この1.0倍というのは,定員30名のところに30人が受験して30人が合格したのとは違うのである。
定員30人のところに22人しか受験生が集まらず,22人が合格したという結果だ。(実際は定員は示されておらず,大学側は50人だって来て欲しかったのであるが・・・)
そう,誰でもいいから授業料を払うために大学に入ってくださいという入試がAO入試なのである。
受験勉強せずに入っても世の中の役に立つ方向の人間ででなければ就職先が見つからないのはあたりまえ。
役に立たない人間を大量生産するのがこの制度だ。
大学全入時代とはこういうことだ。
AOでそんな大学に入ったら「アホですオレは」が確定する。
AO入試で入学した人は間違っても履歴書にAOで合格したなどと書かない方がいい。
せっかくの学歴が負の学歴になるかも。
というより,大きな会社の人事担当には確実に見破られる。
受験番号や学籍番号などの情報からわかることもあるし,何度か面接してそういう情報をさりげなく聞きだすノウハウを持っているから。
近道なんかありません。
あったとしても,一時だけ楽になるだけ。
長い目で見たら,きっちり努力するのが吉ということ。
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誰がどう見てもこいつはスゴイという何かを持っているのが最低条件である。