[2013年6月13日]
物理の教科書で習う反発係数は,2物体の衝突前後の相対速度の大きさの比だ。
相対速度の大きさが100m/sで衝突して,跳ね返った後に40m/sになれば反発係数e=0.40となる。
一般には,物体にスピードメータがついてないので,速度を測りにくい。
とりあえず一方を静止させておくと片方は0m/sで確定する。
もう一方を,たとえばスピードガンで測る手もあるが,そんなもんは必要ない。
上からもう一方の物体を落下させて,跳ね上がった高さを測定したら反発係数が求められる。
ぶつかる前後の速さの比は落下距離と跳ね上がる高さの比の平方根で求められる。
モノサシがあればよいのだ。
そういうわけで,例の統一球のように,ボールの反発係数は高さ4mから落下させて何cmの高さまで上がるかで決めている。
ちなみに衝突する相手の物質はどういうわけか大理石と相場が決まっている。
プロ野球使用球の反発係数は0.4134〜0.4374と決められているようだが,これをたとえば高さ4mからの落下試験では68.4cm〜76.5cmの範囲の跳ね返りで合格となる。
で,今回,統一球は飛ばないという理由が,反発係数の下限値で制作していたからだという。
つまり,e=0.4134くらい。
それを,昨日の会見によれば,ミズノ社にこっそり0.415〜0.416くらいに指示したそうな。
待てよ。
仮に,平均して0.4155になったとして,そんなに飛距離が変わるものなのか?
0.4155−0.4134=0.0021という値はどの程度のものか。
上限値の0.4374とでは68.4cm〜76.5cmと,実に跳ねる高さ12%増しという感じで実感があるが,0.0021だけ反発係数が増えても高さは69.1cmにしか増えず,1%程度の増加にとどまる。
50mの高さのキャッチャーフライが50mと50cmになったからどうだというのだ?
鉛直上方に飛ぶのが問題なのではない。
重要なのは飛距離の方だ。
これは斜方投射の公式で,投射角度が同じなら初速度の2乗に比例するとある。
しかし,これとて,鉛直投射と同じで1%程長くなる程度だ。
100mの飛距離が101mになる。
確かに,ギリギリ入るかどうかの球もあるが,これで100本単位のホームラン増の説明はつかない。
何かおかしい。
飛ぶボールのヒミツは他にあるのだ。
そもそもの理由は,反発係数測定の条件が現場の状況とかけ離れているからである。
たとえば4m程度の落下試験では,落下して衝突する時の速度が10m/sに満たない。
時速30kmとか40kmの球速で野球してるわけではない。
実際の時速150kmでは,ボールの変形の度合が桁違いなのだ。
落下実験では,ボールのごく表層しか変形せず,結局はボールの外周付近の反発係数を測定することになる。
ところが,今回ミズノ社が大きく変更しているのは芯の部分。
実際の打球では,ボールの変形は芯の部分にまで達するので,その反発係数の増加がモロに効いてきて,大きな飛距離の差になっているに違いない。
実際,ホームランがこれほど顕著に増加するのだから,10mくらいの飛距離増加が想像される。
実質的な反発係数は,基準上限の0.43くらいになっているようである。
以上,どーでもよい長い考察でした。
ブランコだけは反発係数に関係ないような気もする・・・
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