[2013年9月24日]
高槻市の全市立中学で電子黒板機能付きプロジェクターなどの導入をするらしい。
一部の学校で先行導入して研究しているようだ。
広報の記事では「わかりやすかった」との声を掲載している。
いろいろ,良い点もあるが,良くない点もあるので指摘しておく。
まず,このような機器を総称してICTというが,Information and Communication Technologyの略。
情報通信技術という意味。
電子黒板というのは,最近の天気予報で気象予報士が棒で画面をいじくって解説しているアレをイメージすればよい。
それを学校の黒板でやるのだ。
見ていてとてもわかりやすいものが作れそうだが,そう簡単にはいかない。
まず,テレビの天気予報で使っているような大きさではなく,学校に導入するのはもっと小さい。
黒板の縦幅に納まる程度。
だから,小さな文字などは,教室の後ろの方の生徒には見づらい。
前方の生徒には見えるだろうが,角度や西日の差し具合でかなり見えにくい場所もできるだろう。
先生はきまってこう言う。
「見えにくい人は言って下さい。」
これで,素直に手を挙げて申告できる生徒ばかりではない。
実際は見えにくくても我慢している生徒も多い。
あるいは,見えにくいかどうかわからない生徒もいる。
だって,前の方の席と比較してみるわけにいかないし。
さらに,見えなくても一向にかまわない生徒もいる。
要するにやる気のない生徒。
いろいろたいへんなのだ。
そういうすべての生徒を掌握する力のない先生は何を導入してもダメ。
ハード的には,テレビの天気予報の電子黒板のように自ら発光するタイプではなく,プロジェクターで投影する簡易型のものを導入するようだから,基本的には遮光しないと見えにくいハズ。
ウチの塾でも,英語や国語でよくプロジェクターを使用している。
しかし,夏期講習中など,光の加減で見にくい時もあった。
そういう細かな環境を考えると,お金をかける割にパッとしない授業になる可能性が高い。
研究授業などは,現段階で最高のモノを見せるので,まあ使えるなあというレベルかもしれない。
実際は,そのようなコンテンツ(映像ソフト)はまだ少ないので,あまり使えない。
そもそも,これが決定的に憂鬱な話なのだが,市はICTの導入を先に決定していて,そのアリバイ作り的に先行導入して研究授業をさせているのだ。
だから,研究授業でうまくいっているから導入に踏み切ったという形をとりながら,実はどんな研究授業をやろうが,批判があろうが,うまくいかない部分を現場教員が指摘しようが,もう導入は決定事項なのだ。
これは,前期後期制導入の時と同じシナリオ。
ロクなもんではない。
教育委員会の導入推進派は,ICTという何か聞こえのいい最先端のモノを導入したという実績で,なんとなく仕事をしたという気分になる。
仕事しましたアピールがしたいのだ。
実際に現場でどれくらい有効かは気にしない。
いや,有効に活用できないのなら現場の教員のせいにする。
現場の先生はたまったもんではない。
意欲ある先生は,それでも良いコンテンツ(授業教材)をパソコンを駆使してせっせとつくるだろう。
はたして,それで良い授業となるか?
ならない。
うん,ならないね。
絶対に無理。
有能な先生が1年間授業なしで教材開発に費やせれば良いコンテンツができるかもしれない。
実際は日々の業務が忙しくて,そんなに開発に時間をかけられない。
そういうこともあって,ICTを使えば,ICTでできる内容の授業にしかならなくなる。
ICTによって,今までできなかった授業ができるのではなく,今までやっていた授業をICTでやろうとしても,できない部分が多いので,ICTでできる内容に絞った授業になる。
今までの授業よりも内容,質がむしろ下がるのだ。
残念だが,ほとんどの場合そうなる。
かといって,こういう流れを否定しているわけではない。
本来は,もっとこういうICTが普及すればいいと思っている。
ウチの塾でも将来的には導入すると思う。
しかし,それは現状で最高のモノを生徒に提供できるかどうかが基準でなくてはいけない。
どこかの教育大付属のように生徒を実験台にしてはいけないのだと思う。
長くなってしまった・・・
くれぐれも,自分のとこの中学でICTが導入されたからといって,良い授業になると喜ぶものではない。
授業のレベルが下がっている場合が多いと心得ておくことだ。
わかりやすい=レベルが低い という可能性がいつもあるのだ。
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