パソコン版を見る

尾崎塾
富田教室

[2014年4月12日]

論文で使う写真について考える

若い頃にカリフォルニアの変成岩を研究していた。

その時の薄片(岩石を薄くスライスして顕微鏡で観察できるようにしたもの)写真が出てきたので,懐かしく見ていた。

ふと,岩石学と生物学では違う点もあるかもしれないが,論文の写真取り違えについてやはり疑問が生じた。

たとえば,こいつはサンプル採取地点44の写真。
img1 丸っこいのはガーネット(ざくろ石)だ。
ガーネットは薄片ではほとんど色づいて見えないが,なんとなく緑色になっているのは,後退変成といって地表に達するまでに徐々に緑泥石などの鉱物に置き換わってしまったからだ。

このような置換鉱物だったり,ガーネット自体の鉄やマグネシウムの量などを細かく測定すると,その変成岩の生成温度条件がわかったりする。
ガーネットは一種の温度計として研究に使われるのだ。

さて,次のは全く別の採取地点116の写真。
ここにもガーネットがクッキリ写っている。
img2
残念ながら,この研究は論文にすることができなかったが,仮に44地点のガーネットを使って温度を求めたとしよう。
その証拠写真として,44地点のガーネットを示そうと思ったら,後退変成の影響でクッキリしていない。
よし,もっと見やすい画像にしてあげよう\(^o^)/
というわけで,116地点のガーネットの写真を掲載したらどうだろう。
たぶん,バレない。
しかも,クッキリ写っているので見栄えがいい。

で,肝心の大発見があったとしよう。
たとえば,私の研究ではその前に研究していた人が見つけていなかった鉱物を発見している。
その鉱物写真を,自分の過去に書いた論文の写真と取り違えることがあるのかないのか。

鉱物なんて,どこでも同じと思われるかもしれないが,同じ鉱物でも大きさや形がかなり個性的である。
だいたい六角形とか四角形とか鉱物独特の形になるのだが,中にいろんな包有物があったり,周囲の後退変成の度合もマチマチ。
ましてや,ドクター論文に使用した写真と他の地域での写真を取り違えるハズがない。

いや,素人さんが見たらほぼ同じように見えるかもしれないが,たとえば双子の親御さんが子供の顔を見て区別つくでしょう。
それと同じで,研究のメインの画像って,自分の子供の写真と同じくらい区別がつくハズなのです。

久しぶりに見て,正直もう忘れてしまっていますが,私が研究していた当時なら,この写真はどの地点のどの薄片のどのあたりの画像か頭に入っていました。
学級担任がクラスの生徒の顔と名前と座席と成績を記憶しているのとも似ています。
とり違えるハズがありません。

細胞の写真ではどうかわかりませんが,岩石鉱物の研究をしていた立場からすると,まだまだ疑問がたくさんあるのです。





にほんブログ村 受験ブログ 高校受験(指導・勉強法)へ
にほんブログ村


にほんブログ村 科学ブログ 地学・地球科学へ
にほんブログ村