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尾崎塾
富田教室

[2014年6月8日]

大学偏差値の深い話

たとえば代ゼミの合格難易度を受験サプリでググると,
同志社大 理工学部個別日程 電気工 63
同志社大 理工学部個別日程 電子工 61

と出てくる。

さすがに60を超えると難関って感じがする?

同様に,神戸大の工学部をググると,
神戸大 工学部前期日程 電気電子工 58

ん?同志社よりも,ひ,低い・・・

そうか,神戸大よりも同志社の方が難しいんだぁ!(^^)!

となるか?


大学のランクって,どうやって決めているのか,掘り下げて見てみよう。
img1 表は,代ゼミの追跡データだ。
つまり,代ゼミの模試を受験した人のうち,合格した人と不合格になった人の分布表。
当然のことながら,模試の上位者ほど合格率が高い。
そして,よく「ボーダー」と言われるのは,その合格率が50%のところなのだ。
この代ゼミの分布から,今回の入試ではボーダーは58と60の間となる。
(偏差値58.0〜59.9は28名合格で42名不合格=合格率40%,偏差値60.0〜61.9は28名合格で26名不合格=合格率52%)
このボーダーというので大学の難易を測ることもあるが,先ほどの63とか61の数字は,合格率60%のところになっている。
この切り方が業者によってマチマチなので,混乱する生徒がいる。
(実は,多くの学校の先生もそれを知らずに指導しているから困ったものなのだが・・・)

もう一つの尺度として,合格者の平均偏差値というのがある。
この同志社大理工だと合格者平均は62.7となる。
実は,世に出回っている大学の難易度というのは合格者平均偏差値である場合が多いのだ。
これには理由がある。

合格率を算出する元データで,たしかに合格率は出せる。
しかし,これは受験生全員のデータなのか?
そんなわけない。
だって,1つの予備校が集められるデータはたかが知れているのだ。
だから複数の会社で協力してデータを集めることもやっている。
たとえば駿台とベネッセ,河合とZ会は模試を共催している。
頑張ってはいるが,やはり不合格者のデータというのは集めにくい。
合格したのなら追跡調査に協力もするが・・・
というわけで,母集団の中で,不合格者数が不足気味になっているに違いないのだ。
すると,合格率50%のゾーンというのはもうすこし高くなるかもしれない。
しかし,どれくらい高いか見当がつかない。
そこで,合格者の平均を取るのだ。
合格者の方がデータがそろっているし,結果的に合格率60%くらいの値に近いし,まあ,なんとなく良さそうなのだ。

統計的意味が,ここでかなり揺らいでいる点に気を付けて欲しい。

合格者の平均って。

じゃあ,どれくらいの学力があれば合格するのかが結局はわからないではないか。


もう一度表を見てもらいたい。
img1 同志社の場合,偏差値40台の3名は特異な例とすると,偏差値52とか54くらいから合格が「発生」している。
つまり,これくらいの偏差値があれば,昨日の話ではないが,あきらめなければ合格してくるゾーンなのだ。
そのように考えて,目標大学の偏差値に10くらい足りなくてもへこたれずに頑張るのがよいだろう。


さて,もう一つの隠された偏差値の意味。

思い出して欲しい。
難易度は,同志社が61〜63で,神戸大が58なのだ。

ありえない・・・

これは,先ほどの実態がそのままカラクリなのだ。
合格者の平均点。
「合格者」の平均点だ。
あくまで「合格した人」の平均点だ。
決して,「入学した人」の平均点ではないので,そこが盲点なのだ。

たとえば,今春,大阪府立北野高校の関関同立合格数は延べ431名。
そして,東大・京大をはじめ難関国公立へ250名は下らない。
卒業生が324名。
難関国公立大に合格あるいは浪人生を引くと,70名かそこらしか関関同立に入学する理由がない。
実際は,医学部志望など,特殊な学科志望もいるので,もっと少ないだろう。
431名のうち何%が入学するのか?
これは定員と合格数を見ればわかる。
同志社大理工(電気と電子)学部個別日程は募集50名に対して370名もの合格を出しているのだ。
つまり,上位で合格するのは,京大や阪大のすべり止めであって,よほどのことがないと同志社に入学はしないのである。
国公立大に入る実力のない下位15%の者が入学する。
img1 表の緑色の部分の合格者はほとんど上位大へ進学
オレンジの部分の人が入学する層

したがって,入学者の平均偏差値は60を超えるはずは全くなく,56程度ではないか。
一方,神戸大学に合格して,他の大学に行く,あるいは浪人する例はきわめて少ない。
実際,電子電子工70名の定員に対し,合格者は72名である。
ほとんど,合格者の平均=入学者の平均なのである。
その時点で神戸大の方が明らかに「入学者」の質が高いのに加え,さらに山ほど私学に不利な要素がある。
1つは,理系であれば理科の科目数。
国公立大はおよそ2科目必須のところが多い。
一方,関関同立をはじめ,多くの私立大は1科目だけしか受験勉強しないのだ。
ここで大きく学生のレベルが異なってくることがおわかりだろうか。
そして,国語や社会を勉強していることは,人間の幅を広げる上で重要なことなのに,私立大学生はそれを避けて入学してくる。
さらに,学生全体の質を大きく左右しているのは一般入試を経ずに入学する「付属高校組」の存在だ。
やはり,内部進学の方がかなり学力的に低くても大学に入れてもらえる。
付属高校もそれなりに努力はしているが,やはり一般入試で入ってくる学生との学力差は歴然としているらしい。

そういうことだから,巷にあふれる受験難易度という数字で大学のレベルを測ってはいけないし,ましてや偏差値が高いので神戸大より同志社大の方が良いと勘違いしないようにすべきなのである。
このことが,先日書いた岡山大VS同志社大の根拠になる。
地方であっても,国立大にはすごく優秀な学生ばかり集まっていると考えてよいのである。



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