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尾崎塾
富田教室

[2014年8月20日]

私立高校パンフレットの見方(進路編)

4.進路状況
いよいよ本丸だ。
要するに,学校選びはその学校へ行った後に,どのような進路が期待できるかに尽きる。
たしかに,人間形成とか情操教育もよかろうが,人間的に良いものを持っていても,各自の能力を生かせる進路に行かないと意味がない。
いくら人物的に良くても,学力のない者は医者にはなれない。

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パンフレットに進学実績が記載されているが,ちゃんと見ないと騙されるので要注意だ。
ほとんどの私立高校はコース制をとっている。
しかし,コース別に進学実績を載せているところは稀だ。
入試説明会に行ってはじめて公表する,あるいは説明会でもなかなか公表しないケースもある。
それくらい,高校としては知られたくないのが実情だ。

つまり,難関大への進学は,上位コースの生徒がほとんどで,下位のコースからはごくわずかしか進学できていない場合。
中学生とその保護者は,生徒本人が難関大に行けたらいいなぁと思って高校を選ぶ。
進学実績に難関大が多いと,自分も行けそうな気がするではないか。これが騙され方その1だ。
ところが,特進Sからは難関大に多く入り,普通の特進からはパラパラ程度,一般の進学コースからほとんど行かないのかもしれないのだ(仮に学力編成が特進S>特進>進学として)。そして,その本人は進学コースに入るのが精一杯だったりする。

騙される方法その2は,進学コースから特進や特進Sへの編入があるという場合。そもそも進学コースに入るのが精一杯の生徒が,特進Sまで学力が急に上がるはずがないではないか。そんな甘い話はどこにもないのに,上位クラスに編入もあると聞いて,自分あるいは自分の子がそこへ行ける可能性が出てくると勘違いする(させられる)のだ。

しかも,進学実績は過去の生徒のものである。
決して入学する本人の学年がどうなるかの予測ではない。
たまたま,その学年は学習意欲が高い生徒が多く,優秀な先生が集まった学年だったのかもしれない。
進学実績は,できれば過年度比較をして,どのコースから毎年どれくらい行っているのかを調べないと意味がない。

よく調べると,進学実績が3年周期で良い場合があったり,急上昇している場合がある。
逆に見ると,当たり年とはずれ年があるということだ。以前にも書いたと思うが,私が勤務していた学校は1学年から京大生が2名出たことが2回しかないのだが,その2回とも私のクラスの生徒だったりする。特に変てこりんな教師がたまたまその年に頑張っていただけかもしれないのである。

コースの内容も書いてあることを鵜呑みにしてはいけない。
難関国公立をめざすコースと書いてあっても,実際はめったに合格しない場合もある。結局は進学実績を見て,在籍人数からどのコースに入ればどれくらいの確率でそのレベルの大学に行けるのかを推定するしかないのである。

それから,現浪別の合格者を明示している高校も多いが,これも要注意だ。
現役合格率を売り物にしている高校は,はたして生徒を本当に最大限伸ばしているのかわからない。現役で入れる大学にとりあえず行かせるという指導では,特に難関国公立大学には入りにくい。浪人してでも旧帝大や国公立医学部へと,意識を高める指導もありなのだ。
難関国公立に入る能力がある生徒に,科目数が少なくて指導しやすい私立大学へと誘導する教師も多い。現役率が高いから良いとは限らないのはそういうことだ。ただし,浪人が多いというのは,結局は大手予備校の力だったりするので,学校の評価としては何とも言えなかったりする。

クラブ活動をメインに高校を選ぶ場合も同様。
そのクラブから先輩がどのような進路に進んだか,しっかりと把握しておくべき。ちょうど今は夏の甲子園の季節だが,野球で東京六大学へ進学できればいいが,甲子園に出ましたというだけでは難しい。むしろ,伝統の強豪校で六大学とつながりの強い高校だと,たとえ甲子園に行けなくとも,何名かの推薦枠を持っているかもしれない。さらに,レギュラー選手ならまだしも,補欠の場合は進学できるかどうかすら怪しい。そのあたりのケアがどうなっているか。特進Sの生徒だけしっかり指導して,難関大に入れる一方,一般の進学コースは授業料をたくさん納めてもらうためのコースであり,進路指導はいいかげんな学校もある。同様に,レギュラー選手の進路は確保するが,補欠選手は知りませんという場合もあるだろう。クラブ活動の延長で進学し,飯を食うのは実際のところ非常に厳しいものだ。
こういうことはパンフレットに記載されるはずもなく,いろいろと調べないとわからない。

結論的には,生徒本人がどのような進路に行く可能性が高いのか。その1点だけが学校選びの最重要事項である。それをパンフレットに記載されている情報からのみ知ることは難しい。

パンフレットに書かれていることを,自分に都合よく解釈して学校を選んでしまわないようにいろいろ書いた。
世の中,そんな甘い話はないのである。
そう思って,専願併願にかかわらず,念入りに私立高校を選んでいただきたい。




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