[2014年11月20日]
こんな本が出てます。
「入試数学 珠玉の名問」
数学の良問中の良問を100題ほど集めて,非常にていねいに考え方を書いてあります。
一般的な網羅系の参考書とは違って,問題数が少ないのですが,その問題を解くことで汎用性が非常に高い。あるいは理解が非常に深まる良問がそろっています。
理系の最終盤の最高のバイブルとなる(著者談)。
まあ,それはそうですが,実際に使う受験生は少ないのではないかと予想できます。
まず,想定される読者を受験生とした場合,ひととおり高校数学はマスターした(つもり)の生徒でないと読めないと思われます。
「まあ,普通はこうだよね。」
「ああ,こういう意味があったんだ。」
「こんなやり方もあるのね。」
「だからいつもこのやり方をするんだ。」
みたいなノリで,ひととおりの解き方を知っている受験生が読むと非常に面白い内容となっていますから。
そんな高レベルの受験生は学校や予備校でいろいろ最終盤にやってくれるので,とてもコレを読んで勉強する時間がとれないのではないでしょうか。
まあ,でも,この一冊でかなり数学力が整えられるので,本当に入試前に価値ある一冊かもしれません。
そういうわけで,受験生のバイブルというよりは,この本,塾の先生に非常によいと思うのです。
受験生が身に付けておくべき定石が網羅されていると同時に,基本的な事項の定義や証明が多く解説されています。
基礎基本を大切にするちゃんとした授業のネタ本として有用だと思います。
たとえば第1問目から東大の問題ですが,サインとコサインの定義を述べる問題。
それから加法定理の証明といった内容。
定義とか証明とかはすごく大切だということを再認識させてくれます。
最初に前書きを読んで,えっ?と思ったことがあります。
おそらく相当な進学校の生徒を想定しているのだと思いますが,著者は高校生の数学に費やす平均総勉強時間を2000時間と見積もっています。
平均ですよ?
よほどの進学校でもどうでしょうかね。
一般の公立高校では,理系であっても3年間の数学の総単位数は16です。
1単位というのは年間の授業数では35時間と考えるので,
16×35=560時間にしかなりません。
これが学校の授業時間です。
現実には行事や試験などでこれより少なくなります。
また,1時間と言っても実際は50分の授業ですし,先生が来て挨拶して,出席確認して,前日のタイガースの話が入ったりするので,実質は40分しか数学をやっていません。
公立高校で実質数学を学校でやるのはおよそ400時間程度です。
そこへ1600時間の上乗せをするのが平均的高校生のハズがありません。
1600÷365≒4.4時間を,毎日学校の授業以外に,しかも数学のみ勉強するなんてことはあり得ません。
一方,私立高校の授業時数はどうでしょうか。
関西大倉は理系で数学総単位数が18ですから公立高校に毛が生えた程度。
講習も熱心にやっている印象がないので,2000時間の確保など夢のまた夢。
大阪青凌は数学総単位数21で,さらに5単位を選択追加できる。
標準単位だけで21×35=735時間,追加授業をとると26×35=910時間。
公立高校の倍以上を学校でできるのだ。
とはいえ,あと1100時間をどこかでやらないといけない。
これだけたくさんやっている私立高校の授業に加えて,さらに毎日3時間も数学の勉強をするのが平均的な高校生?
つまり,この本の著者は超ウルトラスーパーマニアック数学ヲタクが平均的な高校生だと思っているフシがある(笑)
まあ,それを割り引いても,よい本であるので,ぜひ塾の先生方の勉強用に購入されてはどうだろうか。
(あっ,もちろん受験生も読んだらためになるよ!)
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ちなみに古くからの名門=高槻高校では数学総単位数21で大阪青凌と同じ。
カンクラの18はサボっているようにしか見えない。