[2015年4月20日]
生徒「このペースでは間に合わないと思うんです」
塾長「うん,そうだね」
生徒「もう少し,試験に出そうなテーマの問題をバーっとやりたいんです」
塾長「気持ちはわかる」
生徒「学力がついている実感がないんです」
塾長「だろうね」
生徒「今やっている教材は計算ばっかりで,一次関数のようにわかりきったグラフを描けというのも入っていて,そんなことしているヒマがあったら,試験に出そうな応用問題を一通り短期間にやりたいんです」
塾長「気持ちはわかる」
生徒「進研模試が6月にあるので,そこで結果を出さないと・・・,だから今の教材だと全分野やりきるには間に合わないと思うんです」
塾長「うん,間に合わないよ」
生徒「・・・・・」
塾長「仮に間に合うように,応用問題をバーっとやっても,その全ての分野で点数取れないと思うよ。進研模試ってすごくいい問題だから,ちゃんとした力がないと,全く点数が取れないんだよ。だから,絶対に落としてはいけないような計算問題で点数を落としているようでは,ほとんど点数がないし,逆に,基本問題を全部取れば30点くらい取れるから,偏差値50くらいになれるんだ。」
生徒「偏差値50じゃ困るんですが。」
塾長「いやいや,だから,そうやって,出そうな問題をババーっとピックアップしてやっても,基礎力がないし,本来取れそうな基本問題も点数を落とすとなれば偏差値40になるんだ。ところが,今君がやっているレベルの問題をきちっとできるようにしていけば,仮に全分野おわらなくても,やった分をきっちり積み上げているので,その部分が日々上乗せされていくんだ。」
生徒「・・・わかりました。その教材をやります」
塾長「それがベストだと思うからこの教材を与えているんだ」
生徒「でも,今までやったことを忘れていくとダメなので,その教材を持って帰って復習するのはダメですか」
塾長「持って帰るのを有りにすると,持って帰っただけで安心してしまって,自分の頭に入れることを怠る場合があるから教材は持って帰らせないんだ。復習したかったら,そのへんのチャートでもできるし,この教材に書いてある表現がわかりやすいと思ったら,それを覚えて帰ればいいだけ。家で思いだせなかったら,次回塾にきて確認すればいい。そうやって,頭の中で気になってしょうがない状態をつくることが身につけるために必要なんだ」
生徒「わかりました。その教材で頑張ってやっていきます」
塾長「それがいい」
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そこそこ骨のある網羅的問題をやる教材も山ほどある。
だが,その生徒にそれをやっても本当に模試で点数が取れるかというと難しい。
実際の試験では,
基本問題を落とさない計算力。
やっと立式できた問題の正解を導く計算力。
検算をする計算力。
別の解法を試してみる計算力。
とにかく計算力が何より重要なのだ。
そこを避けて,もう少し試験に出そうな問題を解いて,できるような気になって試験を受けても,ほとんど点数が取れずに帰ってくる。
普通の塾なら,よく出そうな問題を解説して,類題を解かせて「ほらできるようになったね」と言ってあげればお仕事終了。
で,点数が取れずに帰ってきた生徒を前にして,
「おかしいな,塾でやったときは解けたのにね。試験の日は調子が悪かったのだね。」
と声をかけてあげたらいい。
ウチの塾は,足りないところを補強して,少しでも学力を上げることだけを考えている。
偏差値60が目標の生徒にとっては,偏差値50じゃ足りないと思うだろう。
ところが,現時点で偏差値40なのだから,確実に偏差値50に近づけないことには話にならない。
偏差値60の夢を見せて偏差値40のままに放置する塾か,少しでも学力をつけて,偏差値50くらいにする塾か。
それを偏差値60にするのが塾の仕事だと言う人もいるだろうが,じゃあ聞きます。
もしもそういう塾があったら,その塾だけが大繁盛して,世の中の全員が偏差値60になるという,すごい矛盾に至ることになるのをどう説明するのでしょうか。
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