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尾崎塾
富田教室

[2015年8月7日]

物理の試験に存在するおかしな採点基準

今日の物理の授業。
img1 学校や予備校では決してやらないような内容の授業をゆっくりやっている。

とにかく,根本原理をしっかりと定着することに主眼を置いている。

その中で,今日触れたのだが,物理の採点で思わぬ減点をされる可能性のある話。

物理の問題は2種類あって,1つは数値で答えを出す場合,
もう1つは文字式で出す場合だ。

もちろん,数値で答える問題で単位をつけなければそれは答としては0点だ。

距離を求めました。35です。と言っても,35mなのか35cmなのかで100倍違ってくる。
それに35フィートかもしれないし,尺とか寸が単位かもしれないのだから,単位を変えればどんな値でも正解となってしまう。

一方,文字式で答える場合はどうか。
単位は必要か否か。

一定速度Vで時間T動いた時の移動距離をVTと答えても何もおかしくない。
なのに,問題文に一定速度V〔m/s〕で時間T〔s〕動いたと書いてあれば,答にも単位を〔 〕付でつけなければ減点されるおかしな風習があるのだ。
img2
通常,物理で使う単位はMKS単位系という国際単位系であるのだから,特に単位を附さなくてもOKだろう。
まあ,cmとかフィートの場合は必ず単位をつけるべきだろうが,問題文に単位があるのだから,答もそれに乗っ取って書いているに決まっている。
それに,T〔s〕というのは,時間Tの単位は秒ですと言っているのであって,Tは秒なのだからその単位も文字Tに込められていると解釈してもよいのである。

その解釈に乗っ取って,問題文の文字に単位が一切附されていない出題も多いのだ。
img3
この場合もおかしな風習が残っていて,問題文に単位がついていない場合は,答に勝手に単位をつけてはいけないという物理の先生が非常に多い。あ,ここで言う物理の先生とは学校の先生や塾の先生のこと。

さて,本当に単位をつけてはいけないのか。
まあ,そういう場合もなくはないが,通常用いる物理の単位はMKS単位系なので,長さを求めてメートルという単位を附けて答えても,本質的にその生徒は何も間違えていないことは明らか。
そこで,本当に勝手な単位のヤードとかインチなどを持ち出してきたら減点してもいいが,全くその生徒の考え方に落ち度はないのであれば満点を与えてしかるべきなのだ。

しかし,現実には,問題文の文字に単位があれば,答にも単位を附けないと減点し,問題文の文字に単位がなかったら,答に単位をつけていたら減点する杓子定規な学校の教師,塾の教師は非常に多いと思われる。
ちなみに,Z会の添削基準も上記の風習にしたがっている。

ところが,実際の大学入試の採点はどうなっているのか。
実は,文字式に単位があろうがなかろうが,計算した結果の式が合っていたら何も減点されることはないのだ。
えっ?と思われるかもしれないが,おそらくどの大学の先生も,文字式で答える場合,単位があってもなくても全く興味がない。
つまり,単位を書いてもいいし,書いていなければ単位が文字に内蔵されているのだから何も問題ないということ。
そういう感覚が大学の先生の感覚なのだ。
したがって,受験生があれこれ気を使って単位を書いたり書かなかったりしても,そんなところは採点基準にならないのでどーでもよいということ。
入試はもっと別の本質的な部分を見ているのだ。

このことは,本当にほとんどの高校の物理の先生が知らない事実。
しかし,実際は上記のとおり,大学の採点基準とは全く異なっている。

大学の採点基準は,何年にも渡って物理教育学会の入試問題検討会に出席して確認しているので間違いない。
この検討会は,近畿のほとんどの国公立と私立大の物理の先生が集まって,そのような採点基準を教えてくれたり,出題意図や受験生の実際の出来具合を教えてくれる場で,大学の先生方は我々高校生や浪人生を教える側がどのように考え,どのように教えているかを知る貴重な場となっている。
こういう研究会があるのに参加する高校の先生は非常に少ない。
どうやら忙しいという意味不明の理由らしい。
何を本業にしているのかわからない!

そういうわけで,不勉強な高校の先生ばかりなので,受験生はおかしな風習を教え込まれて本質とは離れた部分で戦っているのである。

その間に,ウチの塾では本質的に大学の先生方が受験生に身に着けて欲しいと思っている内容を徹底的に指導しているというわけ。


このように,どのような力を大学側が求めているのかをおかしな方向で捉えている指導者に教わるか,本質がわかっている指導者に教わるかでおのずと入試の結果が変わってくるものと思われる。

おかしな方向の指導者は,大手の予備校にも多いし,進学校の指導者にも多い。

今回は,物理の内容での指摘だが,実は英語の指導においても顕著な勘違い指導が横行している。
その件についてはまた後日。








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