[2016年2月9日]
ウチの塾のある大阪の私立高校は,明日2月10日に一斉に入試を行う。
考えてみればおかしな話だ。
大学の入試は私立大学だと,各大学がバラバラの日程で入試を行う。
そして,複数の大学に合格したなら,その中で最も行きたいところに進学すればよい。
ところが,私立高校は(大阪だけでなく京都も兵庫も)全部同じ日に行われるので,1校しか受験できない。
これには歴史がある。
昔,「15の春を泣かすな」という合言葉のもと,私立高校と公立中学校が結託して内申と実力考査の点数で完全に生徒をあらかじめ振り分けていたのだ。
中学校側は,それで合格の確約がもらえるので安心だし,私立高校は生徒数が確保できるので経営も安泰だ。
いろんな業界で行われていて,実は違法なので時々摘発される「談合」と似ている。
似ているというより,同じと言ってもよい。
いや,本来は入試で合否が決まると生徒や保護者は思っているのに,実は事前に決まっているという点で,完全に出来レースなのだ。
善良な生徒をうらぎっているという点で,企業の談合よりもかなり悪質だと言えるだろう。
それが今でもかなり残っていて,その結果2月10日に統一して入試があるということは押さえておきたい。
ところが,実は明日の入試で不合格でも,1.5次入試といって,数日後にまた入試をやる高校がかなりあるのだ。
そういう情報は中学校からは積極的に教えてくれないので,このブログを読むなどしている人がたまたま気づくという程度。
多くの中学生は明日の入試の一発勝負で人生が決まると思って,緊張して受験するわけだ。
大阪府は,教育行政が全くデタラメになっており,今年も公立高校の入試制度が変わって混沌としている。
その結果か,中学の進路指導は崩壊状態で,昔あった談合状態から変化してきているようだ。
生徒はおそらく塾の言いなりになって受験校を希望し,中学側はそれを認めざるをえない。
なぜなら,中学側が今まで持っていた進路のデータがコロコロ変わる入試によって使えなくなっているからだ。
結果的に,中学の進路指導段階では生徒の受験校を制御することは不可能になっていて,それがトンデモなことになっている。
1つの例が顕著なので取り上げよう。
今年の志願者状況を見ると,どの女子校も大きく志願者を減らしている。
良くて現状維持だ。
ところが,1校だけ500人以上増やしているところがある。
大阪成蹊女子高校さん。
一人勝ち状態!
たしかに良い高校だと思う。
しかし,談合機能がちゃんと働いていたら,ここまで偏って志願者が殺到することはありえない。
かつては中学の側である程度交通整理していたのだ。
これ,高校さんもかなり困るはず。
このままだと,定員の2倍ほどの生徒が入学してくるのだ。
教室は足りないし,それだけの教員が集められるかどうかもわからない。
そんなに有能な先生がたくさん余っているわけもなく,今春採用される大量の非常勤の先生の質が心配だ。
かといって,定員どおりの合格者を出せば,大量の不合格者を出すことになる。
私立高校は,今でも事前相談で○をつけた生徒は確約という意味だから,よほどのことがないかぎり不合格にできない。
つまり,志願者を定員で割った「倍率」は意味がない。
志願者を合格者数で割った「実質倍率」はどこもほぼ1.0倍に近いのだ。
このように,私立高校の定員というのは全く意味はなく,これくらい生徒がいたら採算が合うという指標にすぎないのである。
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